四日市市楠歴史民俗資料館の紹介
 この資料館の主要施設である旧庄屋岡田邸は、平成14年3月に岡田様より土地、建物を当時の楠町へ寄贈していただいたものです。旧庄屋岡田邸を所有していた岡田家は代々庄屋の要職にあり、幾つかの古文書や神社棟札、また文政12年(1829年)の岡田家の古文書にも庄屋の記載がみられ、この頃に、庄屋職を桑名藩より拝命したと推定されています。
 また、建物については、敷地内に祀っていた、弁財天の社の中に宝暦10年(1760年)の記載があることから、建築年代は18世紀半ば、少なくとも江戸時代末期に現在の主屋と土蔵が建築され、250年ほど経過した遺構ではないかとみられています。また、隣接する立会所は、岡田家所蔵の古文書によると明治3年(1870年)に役所施設(公共建築)として邸内に建設したことが判明しています。
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 この地方における近世民家の逸品として歴史的価値が高い建造物であることから、平成14年6月に主屋部分を、続いて同年12月に立会所・蔵部分をそれぞれ楠町有形文化財(建造物)に指定しました。
 旧楠町においては、この歴史的建造物の維持と管理について、旧楠町文化財調査委員会をはじめ、名城大学歴史的建造物研究会など、各方面のご指導ご協力を仰ぎながら協議を重ね、楠町議会のご理解を得て、歴史民俗資料館として活用する方針を決定するに至りました。
 平成16年度には、国庫補助金である発電用施設周辺地域振興事業と県補助金である下水道周辺環境整備事業の事業補助認定を受け修復工事を実施しました。
 工事概要は、楠町有形文化財である主屋、立会所、蔵の修復と、年貢米の貯蔵庫としていた米蔵の跡地に、展示収蔵庫兼管理棟の新築を行い、併せて、老朽化により修復不可能な、養蚕所、女子部屋、下屋については解体いたしました。
 平成16年は近年にない台風の上陸が重なり、たびたび工事の中断を余儀なくされ、また家屋の状態も当初の予想より老朽化が進んでおり、修復工事は困難を極めましたが、平成17年3月末に当初の予定通り、完成いたしました。
 この間、平成17年2月7日には、四日市市と楠町が合併しました。それに伴い旧楠町の町有形文化財(建造物)である主屋、立会所、蔵は四日市市の有形文化財(建造物)として指定されました。そして、平成17年4月29日に「四日市市楠歴史民俗資料館」として開館し、楠地区の歴史や伝統文化を継承する施設として活動を続けてまいりました。
 令和4年3月には、岡田様より第2駐車場の土地を寄贈していただきました。
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 この四日市市楠歴史民俗資料館は、楠地域の歴史および文化の保存並びに地域文化の振興を図ることを目的とした施設として、歴史、民俗、文化などに関する資料の収集、展示及び収蔵、保管などの管理運営や事業を展開することを使命としており、収蔵品は現在、総数約5,085点を数え、旧庄屋岡田邸・蔵内に約500点、展示棟内の常設展示室に約100点を展示しております。
 この資料館の今後の活用方法ですが、寄贈を受けた当時から、ご支援ご協力をいただいております四日市市楠歴史民俗資料館保存運営委員会に管理運営に参画いただきながら、楠地区の方々をはじめ、広く市民の皆様に気軽に利用していただける施設として活用し、生涯学習の場として、また歴史文化の発信拠点としての役割を果たしていきます。
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