6 おわりに

 

 国際人権規約や人種差別撤廃条約をはじめとする人権に関する国際的諸条約があいついで採択されたのは、20世紀の2つの世界大戦の反省のもとに、21世紀を人権文化のあふれる「人権の世紀」にしようとする人類共通の願いからであり、世界的な潮流の現れである。

 我が国においても、それらの条約の批准は、同和問題をはじめとする様々な人権問題の解決に向けて努力することが国際的な責務であることを示し、条約に基づき、人権に関する法的整備や人権意識の普及・啓発に関する施策が進められてきたことは、同和問題解決の取り組みにとって大きな力となっている。

 本市の人権尊重都市宣言の目的である「人が人として尊ばれる明るく住みよい社会」の実現は、いかなる差別もなく、すべての市民の基本的な人権が尊重され、誰もが自己の能力を最大限に発揮できる社会を目指すことにほかならない。

 言い換えれば、本答申で前述したことを実現するためには、これまでの同和対策事業を中心としたまちづくりから、豊かな人間関係の創造の視点に立ったまちづくりへと大きく転換することが最も重要なことである。

 ここで言うまちづくりは、街路や公園、建物といったハード面にとどまらず、社会、経済、文化、環境等、生活の根幹を成すあらゆる要素を含めた暮らしそのものの創造であり、生活圏をともにする様々な人々をその地域社会の重要な構成員として受け止め、人間の尊厳に立脚し、お互いに支え合っていこうという「ソーシャル・インクルージョン」という概念による新たなコミュニティの創造、つまり、交流や連帯、支え合いといった、「人権のまちづくり」としての取り組みである。

 今後、市民の人権意識の高揚を図り、様々な課題を抱えた人々の自立と自己実現を支援するとともに、豊かな人間関係を創造するという認識に立ち、本答申の内容に沿って、一般施策の活用・改革・創設という視点で同和行政の推進を図ることと併せて、地区内外の人々の交流を通じた住民主導・住民参加による「人権のまちづくり」を推進することが、ひいては同和問題の早期解決につながるものと考える。

 なお、今後の同和行政施策の展開にあたっては、本答申を尊重して、各分野がもっているプランに反映するなど、施策の具現化、実現化を図る必要がある。そして、改組される同和対策委員会で評価し、その結果を踏まえてさらに工夫を加えるなど、効率的、効果的な実施に努め、同和問題の根本的解決に全力で取り組むことを切に願うものである。

 

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