2 同和問題の基本認識

 

 同和問題は、人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる深刻かつ重要な課題である。

同対審答申は、「同和問題とは、日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態におかれ、現代社会においても、なおいちじるしく基本的人権を侵害され、とくに、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという、もっとも深刻にして重大な社会問題である」、「同和行政は、基本的には国の責任において当然行なうべき行政であって、過渡的な特殊行政でもなければ、行政外の行政でもない」、「その早急な解決こそ、国の責務であり、同時に国民的課題である」、「部落差別が現存するかぎりこの行政は積極的に推進されなければならない」と指摘した。

また、地対協意見具申は、「基本的人権を保障された国民一人一人が、自分自身の課題として、同和問題を人権問題という本質から捉え、解決に向けて努力する必要がある」、「国内において、同和問題など様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務である」と指摘した。

部落差別の解消は、基本的人権を保障するという日本国憲法の精神を実現するものにほかならず、また、同対審答申並びに地対協意見具申は、部落差別解消の実現に向けての方向を的確に示しており、今後も脈々と受け継がれるべき精神である。

部落差別が現存するかぎり、同和問題の解決に向けた取り組みを積極的に推進していく必要があり、四日市市においては、これまでも同対審答申や地対協意見具申の趣旨を踏まえ、同和問題の解決を市政の重要な課題と位置付けて、同和対策事業が推進されてきた。その結果、かつての生活環境の劣悪さが差別を再生産するような状況は基本的に解消され、同和問題は解決に向けて大きく前進した。また、同和問題解決に向けた教育・啓発活動は、市民の人権意識を高め、他の人権問題の取り組みにも大きな影響を与え、広がりを持たせる重要な役割を果たしてきた。しかし、地区に限定した施策を行う際に市民に対して啓発が不十分であったことから「ねたみ意識」などを生じさせた一方、事業目的に関する説明不足や自立支援の視点を欠いた事業展開等が一部に行政依存的な弊害を生み出すなど、部落差別の解消が目的であるという本来の視点を欠き、事業そのものが目的化して同和対策事業が進められた面もあった。そして、現在においても、差別落書きや結婚問題、或いは地区内の高い生活保護受給率や不安定就労などの課題が残されており、同和問題の総合的な解決にまで至っていないのが現状である。

四日市市においては、

・特別対策としての同和対策事業は厳しい差別の実態の早急な改善の必要性から導かれた過渡的措置であること

・特別対策の終了、すなわち一般施策への移行が同和問題の早期解決を目指す取り組みの放棄を意味するものではないということ

・同和問題は国民的・市民的課題であり、今後とも同和行政は市政の重要な柱であること

・差別の原因に迫る視点や姿勢をこれからも持ち続けることが大切であるということ

・同和問題解決のための取り組みがあらゆる人権問題の解決へつながること

を十分認識し、人権尊重都市宣言の目的である「人が人として尊ばれる明るく住みよい社会」の実現を目指して進めていく必要がある。

 

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