○四日市市障害を理由とする差別の解消を推進する条例
平成30年7月4日
条例第32号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 身近で誰もが相談しやすい仕組み(第6条・第7条)
第3章 差別事案を解決するための仕組み(第8条―第14条)
第4章 合理的配慮を推進する仕組み(第15条―第24条)
第5章 補則(第25条・第26条)
附則
私たちのまち四日市市では、平成4年12月に「人権尊重都市」を宣言し、平成9年6月には、「四日市市部落差別をはじめとするあらゆる差別を無くすことを目指す条例」を制定し、障害を理由とする差別を含むあらゆる差別をなくすため、さまざまな取り組みを進めてきました。
市民や事業者の皆さんと共に一歩一歩着実にその歩みを積み重ねてきましたが、それでもなお障害者にとっては、障害に対する理解の不足や偏見により差別を受けたり、障害への配慮が十分ではない仕組みや慣習などにより、日常生活のさまざまな場面において、生きにくさや困難さを感じる状況に置かれることが依然としてあります。
こうした状況の中、今、私たちに求められていることは、障害を理由とする差別をなくすためにこれまで歩んできた歴史や思いを継承し、私たち一人ひとりが障害に対する理解を深め、共に知恵と力を出し合い、障害を理由とする差別を決してしないこと、そして、障害を理由とする差別をなくす取り組みをこれまで以上に広げていかなければなりません。このような取り組みが日常的に広く行われるようになることによって、お互いを大切にし合う心が行き渡り、私たちのまちは、より活力あるものとなります。
ここに、私たちみんなで、障害を理由とする差別を将来にわたって禁止し、お互いに人格と個性を尊重し合いながら共に安心して暮らすことができる、すべての人が人として尊ばれる明るく住みよい社会を着実につくり、将来に引き継いでいくことを決意し、「四日市市障害を理由とする差別の解消を推進する条例」を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消について、基本理念を定め、市の責務並びに市民等及び事業者の役割を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の解消に関する施策の基本となる事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を総合的かつ計画的に推進し、もって障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共に安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(3) 障害を理由とする差別 障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害することをいう。
(4) 合理的配慮 障害者が、障害のない人と平等に全ての人権を享有し、日常生活又は社会生活を営むことができるよう社会的障壁を取り除くにあたって、その実施に伴う負担が過重でない場合に、障害者にとって必要とされる制度の整備及び支援を行うことをいう。
(5) 市民等 本市の区域内に居住する者のほか、本市の区域内に存する事業所等に勤務する者、本市の区域内に存する学校に通学する者及び本市に滞在する者をいう。
(6) 事業者 市内において事業活動を行うすべての者をいう。
(基本理念)
第3条 障害を理由とする差別の解消は、次に掲げる事項を基本として図られなければならない。
(1) 四日市市部落差別をはじめとするあらゆる差別を無くすことを目指す条例(平成9年四日市市条例第26号)の趣旨にのっとり、すべての障害者が障害を理由として差別を受けず、人として尊重されることを旨として行わなければならない。
(2) 障害者に対する差別をなくす取組は、差別の多くが障害及び障害者に対する誤解、偏見その他の理解の不足から生じていることを踏まえ、障害及び障害者に対する理解を広げる取組と一体のものとして行われなければならない。
(3) 社会全体で相互理解と合理的配慮の推進に取り組み、障害の有無にかかわらず平等を基本として、明るく住みよい人権尊重都市四日市市を実現しなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条の基本理念にのっとり、四日市市障害者計画(障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づき策定された計画をいう。)において、障害を理由とする差別を解消するための施策について定め、これを総合的かつ計画的に実施するものとする。
2 市は、障害及び障害者に対する市民の関心及び理解を深めるため、障害理解に関する研修の実施その他必要な啓発活動を行うものとする。
3 市は、合理的配慮の取組について積極的に障害者の意見を聴き、障害を理由とする差別を解消するために必要な施策について、調査及び研究を行うものとする。
(市民等及び事業者の役割)
第5条 市民等及び事業者は、障害及び障害者に対する知識及び理解を深め、障害を理由とする差別の解消に関する取組の普及及び啓発を、市と協力して行うよう努めるものとする。
2 市民等及び事業者は、障害を理由とする差別(疑いがある場合も含む。)に関する事案を発見したときは、市に情報を提供するよう努めるものとする。
3 事業者は、障害の特性に応じて、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮を行わなければならない。
4 事業者は、障害者が利用しやすいサービスの提供及び障害者の雇用の安定を図るための環境整備を図るよう努めるものとする。
(一部改正〔令和6年条例11号〕)
第2章 身近で誰もが相談しやすい仕組み
(身近で誰もが相談しやすい体制の整備)
第6条 市は、障害者及びその家族その他の関係者が可能な限りその身近な場所において相談ができるよう、必要な体制の整備を図るものとする。
2 市は、前項の相談体制に関し、市民の関心及び理解を深めるとともに、相談を必要とする者に十分に利用されるようにするため、分かりやすく周知するものとする。
(障害の特性に応じたコミュニケーション手段の確保及び充実)
第7条 市は、意思疎通について支援が必要な障害者が円滑に相談することができるよう、個々の障害の特性に応じた点字、手話その他の適切な方法により、意思疎通の手段の確保のための配慮を行うものとする。
2 市は、障害者の意思疎通を支援する者の養成及び派遣並びに情報通信機器の整備その他コミュニケーション手段の確保及び充実を図るものとする。
第3章 差別事案を解決するための仕組み
(相談)
第8条 何人も、市に対し、障害を理由とする差別(疑いがある場合も含む。)に関する相談又は情報の提供をすることができる。
2 市は、前項の相談又は情報の提供を受けたときは、次に掲げる対応を行うことができる。
(1) 関係者への事実確認
(2) 専門的知見を活用した情報提供及び助言
(3) 関係行政機関の紹介
(4) 関係行政機関への通告、通報その他の通知
(5) 次条に規定するあっせんの申立ての支援
(あっせんの申立て)
第9条 障害者は、市長に対し、当該障害を理由とする差別に関する事案を解決するために必要なあっせんを行うよう申立てることができる。
2 障害者の家族その他の関係者は、当該障害者に代わって、前項の申立てをすることができる。ただし、当該申立てをすることが当該障害者の意に反すると認められるときは、この限りでない。
3 あっせんの申立ては、前条第2項に基づく対応の終了後でなければすることができない。ただし、あっせんの申立てをすることについて緊急の必要性があると市長が認めるときは、この限りでない。
(1) 行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令により、審査請求その他の不服申立てをすることができる事案であって、行政庁の行う処分の取消し、撤廃又は変更を求めるものであるとき。
(2) 申立ての原因となる事実のあった日から3年を経過しているものであるとき(その間に申立てをしなかったことにつき正当な理由がある場合を除く。)。
(調査)
第10条 市長は、あっせんの申立てがあったときは、当該申立てに係る事実について調査を行うものとする。
3 前2項の場合において、調査の対象となる者は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。
2 四日市市障害者差別解消支援地域協議会は、前項のあっせんのために必要があると認めるときは、当該あっせんに係る障害者その他の関係者に対し、その出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
(勧告)
第12条 四日市市障害者差別解消支援地域協議会は、市長に対し、次の各号のいずれかに該当する者に対して必要な措置を講ずべきことを勧告するよう求めることができる。
(1) 四日市市障害者差別解消支援地域協議会が前条第1項の規定によるあっせんを行った場合において、正当な理由なくあっせん案を受諾しなかった者
(2) 四日市市障害者差別解消支援地域協議会が前条第2項の規定による求めを行った場合において、正当な理由なく当該求めに応じず、又は虚偽の説明をし、若しくは資料を提出した者
2 市長は、前項の規定による求めがあったときは、当該求めに係る者に対し、当該事案の解決のために必要な措置を講ずるよう勧告することができる。
(公表)
第13条 市長は、前条第2項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表に係る者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、その者又はその代理人の出席を求め、意見を述べる機会を与えなければならない。
(四日市市障害者差別解消支援地域協議会)
第14条 第11条第1項の規定による求めに応じてあっせんを行うほか、次に掲げる事務を行うため、四日市市障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を置く。
(1) 障害を理由とする差別を解消するために必要な施策について、市長に意見を述べること。
(2) その他障害を理由とする差別を解消するために必要な事務を行うこと。
2 協議会は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会を兼ねるものとする。
3 協議会は、委員10人以内をもって組織する。
4 協議会の委員は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱する。
(1) 障害者又はその家族
(2) 学識経験者
(3) 保育、教育関係者
(4) 医療、介護関係者
(5) 社会福祉関係者
(6) 事業所関係者
(7) 地域の代表者
(8) 関係行政機関の職員
5 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
第4章 合理的配慮を推進する仕組み
(保育、教育に関する合理的配慮)
第15条 市は、障害のある子供が障害のない子供と共に生き、共に育ち合うことを基本として、障害のある子供が保育及び教育を受けることができるよう、環境の整備に努めるものとする。
2 市は、子供たちに対し、障害についての正しい知識を提供するとともに、障害者に対する差別をなくすため、保育士及び教職員に対し、障害及び障害者に対する理解並びに障害者及びその家族の置かれている実情への理解を深めるために必要な研修の実施に努めるものとする。
3 市は、特別支援学校と保育園、幼稚園、こども園、小学校、中学校等との連携及び調整を図り、障害のある子供の保護者に対し、就学に関する十分な情報の提供及び相談に応じるよう努めるものとする。
4 市は、障害のある子供が、その能力や可能性を最大限に伸ばして自立を図り、社会参加することができるよう特別支援教育を推進するとともに、その目的や内容を市民に分かりやすく周知するものとする。
(医療、介護に関する合理的配慮)
第16条 市は、障害者が安心して医療及び介護を受けることができるよう、福祉、保健、医療その他の関係者と連携し、支援に努めるものとする。
2 市は、障害者が医療又は介護のため緊急を要する事態が発生したときは、必要な支援を行うよう努めるものとする。
3 医療及び介護に関係する事業者は、障害者が安心して診療及び介護サービスを受けることができるよう、障害の特性に応じた意思疎通の手段の確保のための配慮、障害者にとって必要な環境の整備並びに障害及び障害者に対する理解を深めるための研修の実施に努めるものとする。
(福祉、住まいに関する合理的配慮)
第17条 市は、障害者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な福祉サービスの提供体制の確保及び情報提供に努めるものとする。
2 福祉サービスを提供する事業者は、障害者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害者の意思決定への支援、障害の特性に応じた福祉サービスの提供、障害者にとって必要な環境の整備並びに障害及び障害者に対する理解を深めるための研修の実施に努めるものとする。
3 市は、障害者が地域社会において安定した生活を営むことができるよう、市営住宅においては障害者にとって必要な住戸の確保、民間共同住宅においては不動産事業者等と協力して、その賃借が円滑に行われるための必要な支援に努めるものとする。
(交通、公共施設に関する合理的配慮)
第18条 公共交通事業者は、障害者が公共交通機関を円滑に利用できるようにするため、乗降の支援、乗降をしやすくする対策の推進、障害者にとって必要な環境の整備並びに障害及び障害者に対する理解を深めるための研修の実施に努めるものとする。
2 市は、公共施設の整備及び管理にあたっては、障害者が円滑に利用できるようにするため、障害の特性に応じた案内、誘導その他必要な環境の整備を行うよう努めるものとする。
(雇用に関する合理的配慮)
第19条 事業者は、国、県、市その他関係機関と連携して、障害者の雇用機会の確保及び職場への定着が図られるよう、障害及び障害者に対する理解を深めるための研修の実施並びに障害者が働きやすい環境整備に努めるものとする。
2 市は、障害者がその希望と適性に応じた就労を行うことができるよう、事業者、福祉、医療その他の関係者による支援体制を広げるよう努めるものとする。
(情報、コミュニケーションに関する合理的配慮)
第20条 市民等及び事業者は、障害者との意思疎通にあたっては、障害の特性に応じた適切なコミュニケーション手段を用いるよう努めなければならない。
2 市は、障害者自らが、日常生活又は社会生活を営むうえで必要な情報の取得及び意思疎通を行うことができるよう、訓練その他必要な支援を行うものとする。
(防災に関する合理的配慮)
第21条 市は、災害時に障害者がその安全を確保するため必要な情報を迅速かつ的確に伝えられるよう、多様な手段による情報提供を行うよう努めるものとする。
2 市は、地域住民が、災害時における避難にあたり支援を要する障害者に対し、声掛け、避難所への同行その他の支援を行うことができる関係を地域社会において築く取組を推進するよう努めるものとする。
3 市は、避難所において障害者が安全かつ安心な生活を営むことができるよう、障害者支援団体、避難所の運営を支援する社会福祉法人その他の関係者と連携し、障害の特性に応じた必要な配慮に努めるものとする。
(スポーツに関する合理的配慮)
第22条 市は、障害者が障害のない人と共にスポーツを自主的かつ積極的に行うことができるよう、障害者にとって必要な支援体制の整備、指導員の育成及び情報提供を行うよう努めるものとする。
(合理的配慮の提供に係る普及啓発)
第23条 市は、市民等及び事業者の行う合理的配慮の提供に関する取組が促進するよう、合理的配慮の取組事例に関する情報の収集、整理、提供及び普及啓発を行うものとする。
(表彰)
第24条 市長は、積極的な合理的配慮の提供に特に貢献したと認められるもののほか、障害及び障害者に対する理解を広げ、差別を解消するため市民の模範となる行為をしたと認められるものを表彰することができる。
第5章 補則
(条例の見直し)
第25条 市長は、この条例の施行から5年を超えない期間ごとに、検証を行い、必要と認めたときは、条例の改正その他の適切な措置を講ずるものとする。
(委任)
第26条 この条例の施行に関し必要な事項は、別に規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(四日市市委員会の委員等の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
2 四日市市委員会の委員等の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和31年四日市市条例第23号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
附則(令和6年3月25日条例第11号)
この条例は、令和6年4月1日から施行する。