○四日市市手話言語条例
令和8年3月24日
条例第8号
前文
手話は、音声言語である日本語とは異なり、手指や体の動き、顔の表情を使って視覚的に表現する独自の語彙や文法体系を持つ言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。
しかしながら、我が国では、ろう学校において手話の使用が制約されるなど、手話が言語として認められていない時期があった。そのため、ろう者は、自らの言語で必要な情報を得ることもコミュニケーションをとることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた歴史がある。
こうした中で、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置づけられたが、手話言語に対する理解の広がりを未だ感じる状況に至っていない。
本市においては、かねてから手話言語による情報保障に取り組んできたが、手話が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解と広がりをもって全ての市民が地域で支え合い、手話言語を使って安心して暮らすことができる市を目指し、この条例を制定するものである。
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解及び普及並びに地域において手話言語を使用しやすい環境の構築に関し、基本理念を定め、市の責務及び市民と事業者の役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に施策を推進し、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。
(1) 手話言語 ろう者が、自ら生活を営むために使用している独自の体系を持つ言語であって、豊かな人間性の涵養及び知的かつ心豊かな生活を送るための言語活動の文化的所産であるものをいう。
(2) ろう者 聴覚障害者のうち、手話を使い日常生活をおくる者をいう。
(3) 市民 市内に居住し、又は市内に通勤若しくは通学する者をいう。
(4) 事業者 市内に事業所又は事務所を有し、事業を行う法人その他の団体又は個人をいう。
(基本理念)
第3条 手話に対する理解の促進及び手話の普及並びに手話を使用しやすい環境の整備は、次の各号に掲げる事項を基本として行うものとする。
(1) ろう者が、自立した日常生活を営み、地域における社会参加に務め、全ての市民と相互に人格と個性を尊重しあいながら、心豊かに共生することができる地域社会の実現を目指すものとする。
(2) 手話が言語であることを認識し、手話言語への理解の促進と手話言語の普及を図り、手話言語でコミュニケーションを図りやすい環境を構築するものとする。
(3) ろう者は、手話言語による意思疎通を円滑に図る権利を有し、その権利は尊重されなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、基本理念にのっとり、手話言語の理解と普及及びろう者があらゆる場面で手話言語による意思疎通ができ、自立した日常生活や地域における社会参加を保障するため、必要な施策を講ずるものとする。
(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、地域社会で共に暮らす一員として、手話言語について理解を促進するとともに、ろう者と手話でコミュニケーションすることにより、暮らしやすい地域社会の実現に寄与するよう努めるものとする。
2 ろう者は、市の施策に協力するとともに、手話言語の意義及び基本理念に対する理解の促進並びに手話言語の普及に努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、手話言語について理解を促進するとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。
(施策の策定及び推進)
第7条 市は、次の各号に掲げる施策について総合的かつ計画的に実施するものとする。
(1) 手話言語に対する理解及び手話言語の普及を図るための施策
(2) 市民が手話言語による意思疎通や情報を得る機会の拡大のための施策
(3) 市民が意思疎通の手段として手話言語を選択することが容易にでき、かつ、手話言語を使用しやすい環境の構築のための施策
(4) 手話通訳者の配置の拡充及び処遇改善など、手話言語による意思疎通支援者のための施策
(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策
2 市長は、前項に掲げる施策の実施状況を公表するものとする。
3 市は、第1項に掲げる施策について、ろう者及び手話通訳者その他の関係者との協議の場を設けるものとする。
(財政措置)
第8条 市は、手話言語に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第9条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、令和8年4月1日から施行する。