3 一人ひとりの人権を尊重し、さまざまな差別をなくす教育・啓発の推進



   同 和 問 題

 同和問題は、憲法が保障する基本的人権の侵害にかかわる深刻かつ重大な社会問題です。その解決を図るために、国は、1965(昭和40)年の同和対策審議会答申を受けて、1969(昭和44)年に同和対策事業特別措置法を制定し、それ以降三十数年にわたり同和問題の解決に向けての幾多の取り組みを行ってきました。

本市でも、同和問題を重要な課題と位置づけ、その解決を図るために、対象地域の生活改善をはじめ、差別意識の解消のための諸施策の実施や同和教育・啓発の推進を行ってきました。その結果、本市がこれまでに実施してきた「同和地区生活実態調査」及び「人権問題に関する市民意識調査」等から、生活環境の整備と充実、生活や健康水準の向上、若年齢層における就労の安定、高校・大学等への進学率の向上、市民の同和問題に対する理解の進展、学校・園における同和教育の充実等がみられます。

しかし、一部の対象地域住民の自主・自立の促進が十分に図られなかったり、子どもの低学力傾向といった課題も現れてきました。また、ねたみ意識の現れのように啓発活動等の不十分さからくる同和問題に対する新たな課題も生んできました。これまでの同和教育及び啓発活動の努力により、知識としての同和問題に対する市民の理解は進んだものの、今なお結婚差別や差別意識に基づく落書き、インターネットを用いた悪質な差別事象が続いており、また、えせ同和行為を容易に受け入れる状況等があります。それらは、同和問題に対する無理解・無関心や偏見とあいまって、部落差別を助長・容認する社会的な風潮やしくみが依然として存在していることを表しています。

それゆえ、同和問題は今も残る重大な課題との認識のもとに誰もが自由に意見を述べ合える環境を確保して、同和問題の不合理性を徹底して全市民に教育・啓発していくことが重要です。さらに、地域に豊かな人権文化を築き上げるために、市民の主体的な取り組みを多様な形で進展させることも大切になってきます。

 同和教育及び啓発活動は、部落差別の解消を目指し、地域社会におけるすべての教育機関、家庭、職場、諸団体等において重要な課題として位置づけ、推進されなければなりません。

以上の基本姿勢に立ち、次の方針により推進していきます。


(1) 同和問題の今日的課題を明らかにするため、部落差別をうけている人たちやそれらの人たちを取り巻く社会における実態把握に努め、それを実施計画及び推進計画に反映させ、同和教育や啓発活動の充実と推進を図ります。

(2) 学校教育においては、すべての学校・園において、幼児・児童・生徒一人ひとりの個性と可能性を伸長し、自己実現を図り、豊かな生活・進路をきりひらいていく取り組みの充実を図ります。また、互いを尊重し合う豊かな感性と差別の不当性についての科学的認識を育て、差別の解消に取り組む実践的な人間の育成に努めます。

(3) 社会教育においては、人権尊重の精神を涵養するための学習機会の提供、人権に関する情報提供、自主的・組織的な学習活動の支援、またその中心となるリーダー育成など、あらゆる機会や場で差別の解消に取り組む推進体制の充実に努めます。

(4) 部落差別をうけている人たちの自主・自立を支援するとともに、同和問題の解決をめざす指導者の資質向上を図るための研修プログラムの策定を図っていきます。

(5) 本方針の実施にあたっては、学校教育と社会教育の連携を図るとともに、関係諸機関及び民間諸団体等の多様な啓発主体のそれぞれの役割を踏まえた上で、相互の連携を強化しながら、同和教育及び啓発活動を総合的かつ計画的に推進するように努めます。



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