都市像を実現するための具体的な施策を進めていく上では、まちづくりを5つの分野に分け、それぞれの観点から目指すべき方向を描き、基本目標として位置づけることとします。また、これら5つの分野は相互に連携しており、一体的に展開することにより、「みんなが誇りを持てるまち四日市」を実現していきます。

本市は、高度成長期の臨海部への石油化学コンビナート企業立地を背景に経済的発展を遂げてきましたが、その過程では公害という深刻な被害が発生したため、郊外の丘陵部で大規模な住宅団地の開発を行ってきました。この結果として、人口規模に対して大きな市街地を形成してきました。

今後は、人口減少時代の到来・少子高齢化の進行などの日本社会の変容や地球規模の環境問題などにも資するよう、市街地の無秩序な拡大を抑制し、都市基盤が整っている臨海部の既成市街地においては、新たな都市活動の拠点としての活用を図るとともに、住宅団地の有効なストックを活用して、再度、市街地から郊外の住宅団地に至る地域に定住人口の増加を図り、市民が世代や地域を越えて交流し、快適に暮らせる魅力的な住・商複合市街地の形成を目指します。

そのためには、中心市街地や駅前市街地等を含む既成市街地において居住環境の向上に取り組むとともに、郊外の団地においては、住み替え促進による世代の混住を誘導します。

また、農地や森林の保全に取り組むとともに、既存の農村集落についても地域コミュニティが維持され、快適な生活が営めるよう生活環境の維持、向上を目指します。

既存産業用地については、新たな設備投資に対する支援策や操業環境の整備などにより、土地の有効活用が図られ、産業活動が活発に行われる持続可能な生産拠点の形成を目指します。

さらに、四日市公害の環境改善に取り組んできた経験を生かし、今後とも大気や水質などの生活環境の維持・向上に努めるとともに、市民、市民活動団体、事業者などあらゆる主体が、様々な環境改善活動に取り組み、低炭素社会や循環型社会の実現を目指します。

以上のような土地利用、環境面での総合的な取り組みにより、都市機能と自然環境が有機的につながり、調和するまちを目指します。

 現状と課題及びリーディングプロジェクトを見るPDF:272KB

本市は、古くは市場や宿場の町として栄え、高度成長期以降は、全国有数の工業都市として、また名古屋大都市圏の中核をなす都市として発展してきました。

今後、臨海部コンビナート地区では、企業ニーズに合った操業環境整備による再生、さらなる高付加価値型への構造転換や、研究開発機能の集積により、工業系用途での土地の有効活用を図るとともに、その他中心市街地や内陸部における工業用地に隣接する区域等でも都市型産業、次世代産業の導入により地域産業が活性化することで、将来に向けて持続可能な産業都市として発展し、安定的に就労の場が維持されているまちを目指します。

また、地域資源を活かした物産開発や観光産業の振興により、四日市の魅力を市内外に情報発信し、多くの人が訪れると同時に、市民一人ひとりが地域の魅力を誇りに感じ、おもてなし意識が醸成された集客と交流のあるまちを目指します。

中心市街地では、高齢者をはじめ誰もが安心して訪れることができるよう、商業・文化・福祉・医療施設などの充実を図ります。一方、市内各地の定期市を若者にも支持されるように再生するとともに、地域の生活拠点としての郊外の大型ショッピングセンターも含め、それぞれが共存共栄する買い物拠点づくりを進めます。

さらに、外出困難な高齢者や障害者が買い物しやすい宅配、移動販売の担い手が育っており、誰もが生活しやすい買い物環境が築かれた、安心と活気のあるまちを目指します。

また、高度化・多様化する市民ニーズや、さまざまな地域課題に対応するため、市民意識の向上を図りながら、行政と市民、企業の適正な役割分担に基づいた参画と協働によるまちづくりを進め、すべての市民が生涯を通じて社会参加することができるまちを目指します。

 現状と課題及びリーディングプロジェクトを見るPDF:51KB

本市では、個人の生活様式の多様化により、市民の生活圏が広がるとともに、産業の発展に伴い物流が活発化する中で、過度な車依存社会が進み、慢性的な交通渋滞が発生するとともに、公共交通機関の利用者が年々減少しています。

少子高齢社会を迎え、高齢者をはじめとする交通弱者にとって、日常生活に不可欠な鉄道支線や郊外バス路線の維持が困難な状況となっています。

そこで、事業者や市民、市民団体と連携して公共交通の利便性の確保を図るとともに、高齢者や障害者も利用しやすいバス停や駅周辺の環境を整え、公共交通機関の利用を促進します。あわせて交差点や渋滞ネック箇所の整備を進め、南北方向の慢性的渋滞や朝夕を中心とした東西方向の渋滞解消を図るとともに、高齢者や障害者を含めた歩行者や自転車にとっても安全安心な道路空間づくりに取り組み、誰もが自由に移動しやすいまちを目指します。

また、産業のグローバル化に伴い国際物流の効率化が進み、港湾間の国際競争が激化する中で、国内港湾の競争力の低下が懸念されていることから、伊勢湾港の視点で、大型化する船舶への対応や港湾コストの低減などに取り組み、四日市港が背後地産業の物流コスト削減を通じて企業活動を支える、活気あふれるみなとまちを目指します。あわせて臨港地区内の土地の有効活用を図るとともに、点在する緑地や港の夜景、さらには重要文化財及び近代化産業遺産に指定されている末広橋梁などの港湾景観を生かして、市民に親しまれるみなとまちを目指します。

さらに、近い将来発生が予測される東海地震や東南海・南海地震、これまでに経験のない集中豪雨や台風に対して、計画的な耐震対策や雨水対策に加え、市民、企業と行政が一体となって地域防災力の強化に取り組み、災害に備えができた安全に暮らせるまちを目指します。

 現状と課題及びリーディングプロジェクトを見るPDF:151KB

本市は、人口減少時代への突入や社会の成熟化に伴い、福祉や医療に対する市民ニーズがますます多様化し、より一層地域でお互いを支えあうことが必要になっています。

こうした中で、延長保育や休日保育、病児保育などの多様な保育サービスや学童保育サービスを充実するとともに、保護者の子育てへの不安や悩みをワンストップで相談できる体制を整えることによって、安心して子どもを産み育てることができ、また子ども自身ものびのびと育つことのできるまちを目指します。

今後ますます重要となる在宅医療・在宅福祉の分野においては、地域包括支援センターをはじめとした福祉の拠点における医療との連携や病診連携、訪問医療・看護の体制など、在宅での療養をサポートするシステムを整え、安心できる福祉・医療環境を目指します。さらに、市立四日市病院の整備充実や他の二つの基幹病院との病病連携などにより、質の高い医療を提供できるよう努めます。このような基盤整備とともに、福祉・医療にかかわるNPOやボランティア、地域における見守りネットワークなど、きめ細かいサービスの提供のための仕組みづくりにより、子どもから高齢者まで、だれもが地域で安心して生活することのできるまちを目指します。

また、生活習慣病や心の病が社会問題化する中で、一人ひとりが自らの食生活を含めた、身体と心の健康に高い意識を持つとともに、身近なところで生活習慣病予防ができる健康教室や食生活改善のための活動が展開されたり、いつでも気軽に心の不調を相談できる体制を整えることで、生涯を通じて心身ともに健康で暮らすことのできるまちを目指します。

さらに、すべての人の人権が尊重され、地域で安心して生活できるよう、人権意識を高めるための活動への支援やバリアフリー化、児童や高齢者への虐待や、DVなどの防止に向けた体制の強化によって、それぞれの個性と能力を発揮しながら自分らしく生きることのできるまちを実現していきます。

現状と課題及びリーディングプロジェクトを見るPDF:53KB

本市は、これまでも少人数学級や英語教育の充実など独自の取り組みを進めていますが、今後、社会の激しい変化に対応できる子どもたちを育むため、学校教育において、より一層充実した取り組みが必要となってきています。このため、学校の適正な統廃合や老朽校舎改築などの環境整備を行うとともに、子どもたちが、「問題解決能力」や「豊かな人間性」を身につけ、心身ともに健やかに成長できる効果的な教育を実践し、特色ある教育を推進します。

また、本市は、古くは宿場町や「市」を中心として栄えてきたこともあり、大入道などに代表される郷土文化財も多く、また近年では、美術や音楽、伝統芸能など様々な分野において、活発に文化活動が行われています。また、スポーツについても、約1,400にものぼる数多くの団体によって草の根的に活発なスポーツ活動が行われています。

文化面については、今後、遊休化する公共施設の活用も視野にいれて、新たな芸術・文化活動の場づくりや、若者が活発に文化活動を行えるような場づくりを進めるとともに、スポーツについても、市内外に情報発信できるイベントの実施や総合型地域スポーツクラブの拡充、さらには、戦略的かつ特色ある施設整備を進めます。

一方、多くの分野の施策を進めるにあたり、地域コミュニティの役割が一層重要となることから、地域コミュニティを維持・拡充していくための担い手の育成や活性化のための支援策を推進するとともに、生涯学習に多くの市民が参加して、多様なコミュニティを形成することにより、市民力や地域力の高いまちを目指します。

図書館については、高齢社会を迎え、今後より一層生涯学習拠点としての重要性が増すものと考えられ、現在の市立図書館を中心に、あさけプラザ図書館・楠公民館図書室の連携強化を図るとともに、新たな形で市民ニーズに合った更なる機能向上を目指します。

以上のような施策により、市民が心の豊かさを実感できるとともに、自らの地域に誇りを持ち、さらに外に向かって積極的にアピールすることのできる“よっかいち人”を育みます。

 現状と課題及びリーディングプロジェクトを見るPDF:43KB