| 全手術での手術死は4件0.5%、在院死は5件0.6%、肺癌手術での術死は2件0.5%、在院死1件0.3% と低リスクでした。肺癌の術後では、急性間質性肺炎を発症して呼吸不全で死亡した手術死1件と在院死1件がありました。
もう1件の手術死は術前の放射線照射後に手術を行った症例で、健側肺の肺炎および術側の膿胸から敗血症・ 呼吸不全で亡くしました。 3症例とも70才以上の男性で、重喫煙による閉塞性換気障害がありました。自然気胸の手術は特殊な場合を除いて、まず手術関連死はありません。
特発性気胸の場合は、私の20年の経験では1件の死亡もありません。 特殊な場合である2件の手術死とは、それぞれ肺線維症と両肺の気管支拡張症による慢性呼吸不全の症例で、
気胸の発症後に直ちに人工呼吸器の装着を受け、内科治療が無効のため手術を要請された症例です。 表現法を変えれば、術前にすでに人工呼吸器を装着していた慢性呼吸不全の重症例は3件あり、
1件は手術で救命できました。そのほかの疾患の手術での4件の在院死のうち、1件は感染性肺嚢胞の手術後にMRSA膿胸を併発した症例、
1件が心筋梗塞の既往がある有瘻性膿胸の方で退院決定後に心不全を発症したため循環器科に転科し、 4か月後に脳梗塞を発症して死亡した症例、 1件が肺線維症を基礎疾患に持つ有瘻性MRSA膿胸の方で、手術では感染をコントロールしきれずに
術後にMRSA感染が再燃した症例でした。 もう1件は心臓手術後に膿胸を併発した症例で醸膿膜切除術によって膿胸は軽快したものの、 腎不全の治療中に脳塞栓にて退院することなく死亡しました。術後の肺合併症としては喀痰喀出困難が最も重要で、痰の貯留から肺炎などの大合併症、
さらに呼吸不全に進むことが懸念されます。このため自力で痰が出せない場合は、 気管支ファイバーを用いた痰の除去が必要で、さらにミニ気管切開と言って前頚部から3-4mmのチューブを
気管内に留置してここから痰を吸引します。すべてが重喫煙者でした。 こんなところにもタバコの害はあるのです。 肺以外の大合併症としては、脳梗塞2件と急性心筋梗2件(いずれも救命)で、
腎不全はありませんでした。 喉頭浮腫の1件は気管切開で、洞不全症候群の1件はペースメーカー装着で、 胃穿孔1件は緊急開腹術で救命しました。
再手術を必要とした合併症としては、術後膿胸の3件では醸膿膜切除、 醸膿膜切除+胸郭形成術と開窓術をそれぞれ施行し、肺切除術後乳び胸2件中1件にリンパ管結紮、
肺葉切除術後肺瘻6件(4件術後早期、2件は退院後の遅発性)は再開胸で肺瘻閉鎖、 肺葉切除術後気管支断端瘻1件は残存肺を切除し経過良好でした。
医学の進歩によって手術は安全になっていますが、やはり手術は安易に行うものではなくやむを得ず 慎重に行うものです。 |